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コラム
Column
離婚・男女問題

開業した医師・歯科医師の夫がいる奥様向け判例?

Lちゃん「何ですか、そのニッチな感じのタイトルは (笑)」
 
太田「面白い判例を見つけたので・・・まず、前提として夫が自営業者の場合に、養育費や婚姻費用をどうやって取り立てたらいいのか?という疑問が生じますよね。」
 
Lちゃん「サラリーマンなら給与差押えですが、自営業者は給料制じゃないですからね。」
 
太田「ちなみに、会社役員だったりすると、給与と役員報酬を差し押さえるというのもあるんですけどね。」
 
Lちゃん「それも役員報酬を事前にカットしてたりするんですよねー。どんだけ払いたくないのか(笑)」
 
太田「で、まあ、これが個人で経営している医院や歯科医院、これも自営業といえるわけですが、その場合何を差し押さえればいいのか。」
 
Lちゃん「え~と、ある程度金額を貯めて、クリニック内にある医療器具を差し押さえる!」
 
太田「アハハ、かなりの嫌がらせですね。しかし、高額な医療器具などはリース物件である場合が多いです。差押えできない。」
 
Lちゃん「知ってる患者さんから直接取立を行う!」
 
太田「定期的にクリニックに通っている人ですか? そんなんどうやったら分かるねん(笑)。しかも、クリニック自体の信用が・・・」
 
Lちゃん「じゃあ、任意で婚姻費用や養育費を支払ってくれない場合、何を差し押さえたらいいんですか?」
 
太田「診療報酬ですよ。」
 
Lちゃん「あっ! それがありましたか。」
 
太田「最高裁平成17年12月6日決定(判例タイムズ1205号 158頁 )というものがございまして、健康保険法上の保険医療機関、生活保護法上の指定医療機関等の指定を受けた病院又は診療所が社会保険診療報酬支払基金に対して取得する診療報酬債権は、民事執行法151条の2第2項に規定する『継続的給付に係る債権』にあたると判断しました。」
 
Lちゃん「民事執行法151条の2・・・」
 
太田「該当条文を見てみましょうか。」
 
★民事執行法151条の2★
1 債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
① 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
② 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
③ 民法第766条(同法749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
④ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
 
2 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。
 
 
Lちゃん「ああ、なるほど。診療報酬債権も2項の『継続的給付に係る債権』とされるから、1項第2号に基づいて婚姻費用について執行できるというわけですね。でも、診療報酬って継続的給付なんですか? お医者さんが診療行為をしないと発生しないのに??」
 
太田「うん、そこなんだけど、結局『健康保険法上の保険医療機関、生活保護法上の指定医療機関等の指定を受けた』という地位に基づいて、継続的に社会保険診療報酬支払基金に対して診療報酬を請求できるということが重視されているみたいね。」
 
Lちゃん「ふーむ。じゃあですよ、仮に夫が開業医ではなくて、独立して事務所を開設した弁護士だったとしませんか?」
 
太田「まさかアレを・・・」
 
Lちゃん「そうですよ。うちは法人だからできないですけどね、個人事務所の先生なら民事執行法151条の2第2項にあたるんじゃないかと。法テラスから入ってくる報酬!」
 
太田「第三債務者法テラス!!」
 
Lちゃん「民事扶助の事件の報酬とか国選の報酬とか・・・」
 
太田「弁護士とか法テラスと契約しているとか、そういう地位に基づいて得られるものではあるけど、継続的に、かな? 法テラスの事件をずっといっぱいやったら『継続的』といえそうな気もしないでもないですが・・・どうでしょう? 医療と違って国民皆保険ということじゃないですよね。そこが大きな違いで。」
 
Lちゃん「そこは判例がないんですね。」
 
太田「多分ないです。ここだけの話ね、例えばイソ弁の先生は給与口座と国選の口座を分けて、給与口座だけ奥さんに見せてる先生もいるらしいのよ。国選の報酬が入る口座は内緒。」
 
Lちゃん「国選の報酬は全部ヘソクリになるんですね(笑)。それは国選に力が入っちゃう!」
 
太田「なので、今日の話は医師・歯科医師の奥さん向けに書いたつもりなんだけど、弁護士の奥さんも夫の収入源についてはよく調べたほうが良いということで。」
 
Lちゃん「先生、同期の先生に刺されないようにしてくださいね(笑)」