その他法律問題
取締役の解任と損害賠償
Lちゃん「あれ、会社法がらみの話、珍しいですね〜。」
太田「マチベンでもそれなりに会社法関係の相談があることに気がついた(笑)。そりゃそうだ、個人営業の商店みたいなもんでも、法人化してたらみんな会社法が関係するもんね。あははは。」
Lちゃん「同族会社だったり、友達同士で起業したり。」
太田「家族だから、友達だからということでナアナアで会社作ると後で揉めたときに大変なことが起こる。ここがまさに会社法の出番!」
Lちゃん「で、今回は取締役の解任ですね。」
太田「喧嘩したから取締役を解任してやった、というのはままあるパターンですね。取締役の解任自体は簡単なの。株主総会の普通決議でできるから、株式を過半数握ってれば簡単。」
Lちゃん「保有株式数って大事ですね…」
太田「当たり前です! その辺り、やっぱり会社を立ち上げるときに注意しないと。『君は代表取締役だけど出資しなくていいからね。』って言われて、株式持たずに代表取締役になったら…」
Lちゃん「悪いときには責任を取らされ、儲かってきたらポイされかねないですね(笑)」
太田「ま、普通ならそういう場合でも、任期満了を待ってポイなんですが。たまに任期途中で解任されちゃうことがある。そして、それはさっきも書いた通り、会社法上可能なんだね。」
Lちゃん「任期途中で解任されてしまった取締役は泣き寝入りですか?」
太田「いやいや。会社法はちゃんと手当をしていますよ。会社法339条を見てください。」
【会社法339条】
1 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
Lちゃん「原則、会社に対して損害賠償請求ができるんですね。しかし、『正当な理由』とは?」
太田「基本的には職務執行上の法令・定款違反があたると考えられています。後は病気で職務が執行できないような場合。まあ、解任されて当たり前のケースですね。」
Lちゃん「経営判断にミスがあった場合はどうでしょう?」
太田「ささいなミスだとか、結果的にみて会社に損害が出たとか、そういう場合には『正当な理由』にあたらないと考えられてます。著しく取締役として能力を欠くような場合は正当理由ありとされる可能性があります。」
Lちゃん「なるほど、金銭面ではかなり取締役は保護されてますね。ちなみに損害賠償請求ですが、何を損害として請求できますか?」
太田「やはり、任期途中の解任の場合には、残りの期間の役員報酬だね。後は退職慰労金や賞与が請求できる場合もあるかな。」
Lちゃん「なるほど。気をつけないといけませんね…」
太田「何Lちゃんは難しい顔をしてるの。」
Lちゃん「御飯をおごってくれるメンズから投資話がありまして、株式会社作るから株主にならない?って。」
太田「はい、自己責任でね。有限責任だから最悪出資した分を諦めたら済む。」
Lちゃん「ついでに取締役に就任しないか、って…」
太田「な、何の会社?」
Lちゃん「おばさんレンタルだそうです。おじさんレンタルがクローズアップされてるから、それのおばさんバージョンで。客は女性限定、依頼を受ける内容も公序良俗に反しない限りで色々受けてみるらしいです。掃除やお料理以外に、入院のお見舞いに行くとか、お母さんがわりに説教するとか、ホームページに具体例を出すって。」
太田「案外面白いかもね〜」
Lちゃん「先生にも参加して欲しいって言ってました。」
太田「株式の引き受け? 金額によっては考えるよ。」
Lちゃん「いや、弁護士資格のある、釣り好きの変なおばさんということで…」
太田「却下!」