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コラム
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離婚・男女問題

直接的面会交流が認められない事案(前編)

※直接的面会交流は原則として認められるべきものですが、例外的に子の福祉に反すると認められる特段の事情があれば間接的面会交流でもやむを得ないとされています。いったいどのような場合に直接的面会交流が認められないのでしょう。一つの審判例を見てみましょう。
 
Lちゃん「案外、お子さんをお父さんに会わせたくないという女性って多いですよね。」
 
太田「多いねえ。ただ、近年は本当に面会交流については裁判所が推進してて、仮にDV事案であったとしてもお子さんに暴力をふるってないなら第三者機関を利用してでも会わせなさい、みたいなことを言ってくるんですよねえ。それがいいことか悪いことかは判断を差し控えますが。」
 
Lちゃん「う~ん、逆にどういう場合だと直接的面会交流が認められないのか、審判例が気になるところです。」
 
太田「そうねえ。今日は、一つのケースとして、東京高裁平成27年6月12日決定の事案を見ていきましょう。これ、元の審判は東京家裁平成27年2月27日のもので、そちらに事案が詳しく書いてあるんですけどね。」
 
Lちゃん「ふむふむ。」
 
太田「申立人である男性は、相手方である女性との同居中に、口論して、その際にガラスのコップを割ったり、掛け時計を素手で殴って壊したり、携帯電話を壁に投げつけて壊すなど物に当たることがあって、長男はコップの破片でけがをしたこともありました。」
 
Lちゃん「お子さんの面前での間接的暴力ですね。」
 
太田「それ以外に、お子さんの面前で女性を罵倒することもあったの。で、ある日、男性が女性をケガさせてしまったので、二日後に女性がお子さん二人を連れて実家に戻ったんです。」
 
Lちゃん「それは仕方ないです。お子さんに対しても心理的虐待になりますよね。」
 
太田「その後、女性が離婚調停と婚姻費用分担調停を申し立てるでしょ、一方で男性の方は監護者指定や子の引き渡しの審判を申し立てたり(のちに取り下げ)、面会交流調停を申し立てたりするでしょ。それで、女性が保護命令を申し立ててそれが発令されたりするでしょ。」
 
Lちゃん「およそ考えられるフルコースをやってますね。」
 
太田「そうそう。それだけ高葛藤の事案といえます。離婚調停は不成立となって、女性から離婚訴訟を提起、男性から反訴が提起されました。」
 
Lちゃん「ところで面会交流の調停でもめると調査官が調査をするじゃないですか? 家裁調査官は何と言ってるんですか?」
 
太田「『未成年者らの現在の心身状況や生活状況に特段問題はなく、順調に発育していることが認められ、面会交流を控えなければならないような未成年者側の事情はうかがえなかった』としながらも、『当事者間で面会交流を調整することは極めて困難であると思われ、面会交流を実施するとしても、当事者同士が顔を合わせずに済むよう、第三者機関の支援が必要な事案と思われるが、当事者の対立は深刻であり、そこまでの協力態勢が整うかは今後の課題である』と述べています。」
 
Lちゃん「わあ、第三者機関を利用するにしても、どうしろって話ですよね。」
 
太田「そう。さて、ここで医師の意見書が出てきます。女性と子ども二人に関するものです。おおざっぱにいうと、女性は心的外傷後ストレス障害で通院加療中。子どもたちは心因反応(不安、うつ状態)なので、男性との面会は控えることが望ましいとの内容です。」
 
Lちゃん「女性とお子さんたち、辛かったんでしょうねえ・・・。」
 
太田「なお、女性は審判手続中にある提案をしています。すなわち、将来的に直接的面会交流を視野に入れ、子どもたちの写真・手紙の送付だけではなく、男性から子どもたちにクリスマス等のプレゼントを贈るのはどうかと。ただ、その前提として、女性は男性に対し、父子の信頼関係を取り戻すために、物に当たったり、大声を出したことが良くないことで、反省している旨を手紙にして渡してほしいと要求しました。」
 
Lちゃん「え、その条件、男性側はどうしたんですか?」
 
太田「子どもたちの目の前で大声を出したことはない、間接交流を実施するのにそのような手紙を子どもたちに渡す意義が理解できない、と言って女性側を非難しました。」
 
Lちゃん「でしょうねえ・・・。ここまで対立する事案ですから想定内です。しかし、調査官の報告書には、『面会交流を控えなければならないような未成年者側の事情はうかがえなかった』って書いてあるんですよね。結局東京家裁はどのような判断をしたんですか?」
 
太田「主文。相手方は、申立人に対し、四か月に一回程度、未成年者らの近況を撮影した写真を送付しなければならない。」
 
Lちゃん「写真の送付だけになったんですね! 決め手は何ですか?」
 
太田「まず、別居当時に長男が3歳、二男は1歳5か月だったんですが、それから約3年半経過していて、その間面会交流が実施されていなかったことからすると、長男は男性に関する記憶があいまいになっている可能性があり、二男については男性を父として認識・記憶しているかどうかすら怪しい、と。そのほか、長男は男性の女性に対する言動や、女性が心的外傷後ストレス障害になって通院しているのを見ているため、男性に対するマイナスイメージを持っていても不自然ではない、と。そのような状況からすると、まずは間接的面会交流を実施して父子の信頼関係を構築するプロセスを経る必要があるとしました。」
 
Lちゃん「ふむふむ、それで?」
 
太田「ただ、信頼関係を構築するプロセスにおいては、女性側の協力が必要なのに、男性においてさきほどの女性側の提案を蹴って非難する姿勢を崩していないことからすると、男性とのやり取りを必要とする面会交流(間接的面会交流を含む)に対する女性側の協力を求めることは無理を強いるものである、と。まあ、そのようなことから、男性と女性とのやり取りを必要とする面会交流(間接的面会交流を含む)を実施することは、子の福祉に反する特別の事情がある、としたんです。」
 
Lちゃん「なるほど~。それで写真の送付だけになったんですね。でも、これ、高裁で違う結論が出るんですよね。」
 
太田「そうなんですよ。長くなるのでまた明日!」
 
 
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