LGBT
LGBT当事者の思想的立場は一枚岩ではないということ
※LGBT当事者の方がみんなリベラル寄りの思想を持っているわけではないし、活動に参加・賛同しているわけでもないのです。
Lちゃん「LGBTの方たちは今度の衆院選でみんな立憲民主党や共産党に投票するのでしょうか? 例えば、立憲民主党は、LGBT平等法を制定し、同性婚を可能とする法制度の実現を目指すと言っています。」
太田「いや、そんなことはなくてね。確かに、自民党は基本的に日本国憲法を改正しないと同性婚は認められないという立場だから、同性婚の法制化が遅れる→リベラル政党やその候補者に投票しよう!という当事者もいますよ。だけど、そうでない人もいます。考えてみてください、LGBT当事者だって、セクシャルマイノリティーだということのみで生きているわけではない。セクシャリティ以外の面ではマジョリティーと何ら変わらない生活をしています。」
Lちゃん「それはそうです。」
太田「だから、共産主義者の人もいれば、保守思想の人もいます。まあ、当然のことですよね。保守寄りの思想を持った人は、やっぱりリベラルの考え方には賛成できないので、リベラル政党には投票しないでしょう。」
Lちゃん「ふむふむ。しかし、やっぱり保守思想とLGBTの権利擁護とは相容れないのではないですか?」
太田「いや、そうでもない。元々日本の伝統・文化はLGBTに親和的なはずなんですよ。」
Lちゃん「歌舞伎では男性が女性の役をしますし、戦国武将には『お稚児さん』がいたという話でしょうか。」
太田「比較的新しいところでは、女性同士の親密な関係について書いた吉屋信子らの小説が売れたり、女性が男性役もやる宝塚ができたりしました。というわけで、伝統や文化を重んじる保守思想の立場からしても、特にLGBTの権利を擁護することがおかしいわけではないのです。」
Lちゃん「そうすると、保守思想の当事者の方々はセクシャルマイノリティーをめぐる政治的問題についてはどのように考えているのでしょうか?」
太田「これはね、まず同性婚については賛成する。しかし、野党の考えるLGBT差別解消法については反対するといった立場の人が多いと思われる。」
Lちゃん「何で差別解消法には反対するのでしょう? 差別がなくなるのは良いことじゃないんですか?」
太田「LGBTの差別を禁止するといっても、『何が差別か』という定義があいまいで、逆にマジョリティー人権を侵害しかねないという問題をはらんでいます。保守層の当事者がよく挙げる例としては、女子トイレや女子更衣室、女湯などがあります。例えば肉体的には男性だけれども心は女性だという人がいるけれど、リベラルの理論からすると、そういう人が女子トイレや女子更衣室を利用するのを防ぐことは差別になってしまって防げないことになってしまうんですよ。」
Lちゃん「え、見た目が完全に男性の人が女子トイレや女子更衣室、女湯に入ってくるんですか? それは非常に困ります!」
太田「でもね、『彼女』はLGBTだから、そう思うことは『差別』になってしまうんです。」
Lちゃん「嫌だ、先生、何とかしてくださいよ!!」
太田「待って、私が何とかできる話じゃなくてね・・・LGBTの『差別』を禁止するということは、そういうところに行きついてしまうということなんです。」
Lちゃん「百歩譲って本当に心の性が女性であれば何も起きないでしょうからいいですが、人の内心なんか簡単にわからないじゃないですか。もし心の性も男性なのに、女性だと偽って女子トイレなんかに入ってこられたら・・・。」
太田「ですよね。女性の権利を擁護してきたリベラルが今度は女性の権利を侵害するような政策を進めかねない。だから保守層のLGBT当事者の皆さんはリベラルが進めようとしている差別解消法には反対しています。」
Lちゃん「なるほど、よく分かりました。」
太田「ほかにも、リベラルはLGBT当事者を政治的に利用しようとしているんじゃないか、という危機感を持った人もいますね。そんなわけで、セクシャルマイノリティーの人たちの中にはリベラルの活動からは一線を引いていたり、冷めた目で見ていたりする人もいるわけです。」
Lちゃん「ちなみに先生はセクシャルマイノリティーをめぐる諸問題についてはどういう立場なんですか?」
太田「私は基本的に保守思想寄りの立場なので、同性婚については認めるべきだけれども、差別解消法には否定的ですね。ただ、自民党のような、同性婚を法制化するためには改憲が必要だという意見ではない。今の憲法24条でも十分同性婚を認めることができると考えます。」
Lちゃん「今日はちょっといいお勉強になりました。」