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コラム
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LGBT

アウティングは常に不法行為となる?

※2020年11月25日、東京高裁でアウティングの違法性に言及した判決がなされましたが、そもそもアウティングとは何かという定義から考えていきましょう。
 
Lちゃん「アウティングっていうのは、本人の承諾なく、性自認や性的指向を第三者に漏らすことですよね。一橋大学の事件がニュースになったときにちょっとだけ勉強しました。」
 
太田「あの事件は、結局、原告(=被害者遺族)と加害者である被告が和解して、その和解内容に口外禁止条項がついているものだから、和解の内容も分からないんですよ。原告は大学も訴えていたんですが、一審で請求棄却になり、控訴も棄却された。ただ、判決理由に、アウティングは人格権ないしプライバシー権等を著しく侵害するものであって、許されない行為であることは明らかであるということが明記されたので、画期的な判決といえます。」
 
Lちゃん「確かに告白された後にゲイだというのを同級生にばらすのは良くない行為ですね。」
 
太田「しかしですね、アウティングの定義が、『本人の承諾なく、性自認や性的指向を第三者に漏らすこと』だとすると、いついかなるときにもアウティングは許されず、不法行為が成立するのかといった疑問が生じます。」
 
Lちゃん「え、絶対ダメじゃないですか? まだLGBTに対する差別のある日本において、本人の承諾なくゲイだとかレズビアンだとか、トランスジェンダーだとかばらすのは良くないです。」
 
太田「本件事案から離れて考えてみてください。例えばですよ、Lちゃん、職場で同僚からセクハラを受けたらどうしますか?」
 
Lちゃん「我慢できないようなら上司に相談します。当然です!」
 
太田「ですよね。これ、同性からのセクハラだったらどうします?」
 
Lちゃん「ハッ! セクハラの内容によっては、セクハラ加害者の性的指向を上司にばらすことになってしまいます・・・これもアウティングになって不法行為で損害賠償請求されてしまうんですか? すごく困ります!!」
 
太田「でしょう? このような場合には不法行為が成立しないとするロジックが必要だ。そこで思いつくのが、アウティングの定義に『正当な理由なく』という文言を付け足すことです。『本人の承諾なく、正当な理由もないのに、性自認や性的指向を第三者に漏らすこと』、これならさっきの事例はアウティングにならない。」
 
Lちゃん「良かったです~! って、安心してる場合じゃありませんよ。実際にはどうなんですか?」
 
太田「どうでしょうねえ。何か判例が出てくるわけではないのですが、一応は三重県のアウティング禁止条例が参考になるかと思います。正式名称は、『性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例』というの。」
 
三重県|性の多様性を認め合い、誰もが安心して暮らせる三重県づくり条例が制定されました (mie.lg.jp)
 
Lちゃん「ほうほう、これが話題のアウティング禁止条例ですね・・・第4条ですか。」
 
 
【第4条】何人も、性的指向又は性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならず、 及び性的指向又は性自認の表明に関して、強制し、禁止し、又は本人の意に反して、 正当な理由なく暴露(本人が秘密にしていることを明かすことをいう。)をしてはならない。 
 
 
太田「何か気が付くことはありますか?」
 
Lちゃん「条例に罰則がないので、実効性がないような気がします。」
 
太田「県によると、社会全体の理解が広がり、共通認識となることが目的だから、罰則規定は設けなかったみたい。って、問題はそこではなくて。」
 
Lちゃん「あ、すみません、『正当な理由なく』という文言が入ってますね!」
 
太田「そうそう。やっぱりね、この文言がないと、さっきのセクハラの事案のようなときに、誰にも相談できずに被害者が泣き寝入りすることになってしまうので。セクシャルマイノリティーからのセクシャルハラスメントについて、上司など『しかるべき人』に相談するのは『正当な理由』があるので不法行為とならないと考えるべきですよ。」
 
Lちゃん「けど、相談した上司が他の人にばらしたらどうしましょう・・・。」
 
太田「例えばですけど、そのまた上司に改善策を相談するのはまた別として、無関係の同僚などに言いふらしたら、それはその上司が悪い。上司だけじゃなくて会社ごと訴えられる可能性もありますね。」
 
Lちゃん「あ、そうか。よく分かりました。」
 
 
☆正当な理由のないアウティングは不法行為です☆