失業保険を受け取ったらその分休業損害から差し引かれるの?
Lちゃん「さっき、松山のいとこからLINEが来ました。GWに例の件で松山に行ったせいで、伯母さんから法律事務所勤務だということを聞いたみたいで…はぁ。」
太田「法律相談なの。」
Lちゃん「はい。よかったら弁護士に聞いておいてね、ですって。」
太田「純粋に旅行ではないとはいえ、尾道から松山まで運転してくれたいとこでしょう? 答えてあげましょう。」
Lちゃん「それは兄ちゃん(31)のほうで、今LINEが来てるのはその妹(26)です。兄ちゃんは明るくて優しいんですが、Pちゃんはメソメソして苦手で…あ、すぐにピーピー泣くからPちゃんってあだ名なんですよ。アラサーの今も!」
太田「まあ、Lちゃんが答えないと泣いちゃうかもしれないので、一応お話を聞きましょう。」
Lちゃん「先生、ブログネタ以外に何の得もないのにすみません。えーと、前提としてPちゃんは松山市内で働く契約社員のOLだったんです。しょっちゅうミスして、失敗する度にわんわん泣くので、いつ雇い止めになるか伯母さんはヒヤヒヤしてたみたいですが、短大卒業からずっと働けていたみたいです…雰囲気美人だから周りが騙されてたんですよ、チッ!」
太田「Lちゃん、黒い感情を出すのはやめて(笑)」
Lちゃん「ハッ! 私としたことが。まあ、泣き虫なのはどうでもいいとして、Pちゃんは去年の2月に交通事故にあったんです。追突事故で全治3か月の大怪我。その間働けない状態になりまして、途中3月末で会社の契約期間満了になってしまったPちゃんは、そのまま契約が更新されなかったみたいで。」
太田「あらまあ。」
Lちゃん「無職になった理由が理由なので、失業保険は待機期間7日でもらえたんですけどね。ただ、怪我で働けない間、保険会社からも休業損害もらってたんですよ。これって二重取りにならないか、後から失業保険でもらった分を返せって言われないか心配だって。」
太田「結論からいうと、返さなくて大丈夫です。」
Lちゃん「なんだ、面白くない。」
太田「Lちゃんは心底Pちゃんが嫌いですね(笑)。東京地裁昭和47年8月28日判決で、失業保険は損益相殺の対象にならないと判断されていますので。」
Lちゃん「他に損益相殺されないものには何がありますか?」
太田「傷害保険金や労災保険上の特別支給金、社会通念上相当とみられる香典、見舞金などですね。逆に傷病手当や労災の休業保障給付なんかは相殺されます。判断基準がよくわからないんだな。」
Lちゃん「へー、お見舞金なんかは分かるけど、なぜ失業保険は損益相殺されないで、傷病手当は損益相殺されるのか、意味がわからないですね(笑)。」
太田「まあ、裁判例なんてそんなもんです。で、LちゃんはPちゃんが嫌いな理由は、泣き虫以外にもあるでしょう?」
Lちゃん「すぐに泣くから、一緒にいたら全部私が悪いことにされるんです! 彼女が小学2年生のときにうちに泊まりに来たときも、私のスイカを黙って食べたから頭を一発叩いたら泣き出しちゃって…」
太田「それはLちゃんが大人気ないでしょう(笑)」
Lちゃん「うちの母に泣きながら謝るんですよ。『おばさん、私が悪いけん、この種を松山に持って帰って育てて、広島に送るけん、Lちゃんにはこらえて欲しいー!』って種をかき集めつつ、チラチラ上目遣いで。」
太田「あ、それは結構上級者だ(笑)」
Lちゃん「イラっとして、『スイカになるまでいつまでかかるんじゃ、ボケッ!』って呟いたところで、今度は私が母に頭をはたかれましたよ…」
太田「まあ、そうやって契約が更新されてきたんでしょうなあ。」
Lちゃん「泣き落としを実行する元気のないときに、ついに雇い止めになったんだと、私も思います。」
太田「で、Pちゃんは今働けてるの?」
Lちゃん「葬儀社に転職しました。泣き虫でも不都合ない、むしろオッケーって思ったみたいで。」
太田「そ、それはどうかな…」