その他法律問題
認定司法書士の代理権の範囲について
太田「いやー、最高裁判決が出ましたね!」
Lちゃん「何のことですか?」
太田「Lちゃん、知らないの! 業務に関係するニュースはチェックしようよ。」
Lちゃん「司法書士の話は関係ないと思ってスルーしてました…」
太田「認定司法書士の簡裁代理権って知ってますよね?」
Lちゃん「それは知ってます! その関係で140万円以下なら裁判外で和解できるんですよねー。」
太田「今回は、140万円以下とは何が140万円以下なのかが争われたのでした。司法書士法には『紛争の目的の価額』としか書いてないからね。」
Lちゃん「確かに曖昧ですよね。例えば合計300万円の借金を背負っている人の債務整理で、A社50万円、B社100万円、C社150万円という内訳だったとき、ABC全部を認定司法書士が債務整理すると全部違法なのか、C社の分だけ違法になるのか。」
太田「本件の上告人(一審の被告である認定司法書士)は、債務整理によって得られた経済的利益は140万円を超えないので違法じゃないと主張していたのですよ。」
Lちゃん「その解釈は無理があるかな…経済的利益が140万円を超えないなら、どんな多額の債務整理をしてもいいことになってしまいます。」
太田「で、今回最高裁は、個別の債権額を基準にすべしと判断しております。Lちゃんの例だと、C社についてだけ違法になるということね。」
Lちゃん「借金の総額ではないんですね。けど、分かりやすい基準だと思います。」
太田「そう。基準の明確性という点で、経済的利益とか、債権の総額といった、なかなか明確にならないものを基準としない旨判断しております。」
Lちゃん「でもこの最高裁判決で仕事が減ってしまう司法書士が…」
太田「逆に140万円以下の小口で何社からも借りてる人の債務整理はできるんだからさ、むしろ判決で総額にならなくて良かったんじゃない?」
Lちゃん「それはそうですが。」
太田「銀行からの借り入れだと140万円オーバーすることも多いですよね。そういう方は迷わずに弁護士に相談していただければ。」
Lちゃん「あと、まだまだ過払いのある人もおられると思いますので、消費者金融との取引がかなり長くて140万円を超えそうな方も弁護士に。」
太田「せっかく司法書士に頼んだのに、過払いの額が140万円を超えてしまって、『これはうちではできないので弁護士に頼んでください』と言われる人も出てきております。そんな司法書士は少ないと信じたいのですが、140万円を超えて過払い金が出てるのに、和解で140万円以内に丸める司法書士がいると聞いたことがあるので…」
Lちゃん「今回の判決にそって考えたら違法ですよね、多分。」
太田「そうですね。何より依頼者の利益にならない。ちなみにCMで有名なある司法書士事務所は、ちゃんと過払い金が140万円をオーバーしたら依頼者に弁護士に相談するよう指導するみたいです。ちょっと見直した。」
Lちゃん「(笑)」
*最高裁平成28年6月27日判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85969